不思議な案山子



それはそれは不思議な案山子




Page.10 -動く案山子-






ぴょんっ





いきなりびっくりしたように案山子が起き上がった。



こつん、こつっ、こつっ・・・



案山子は一本の棒を支点に起き上がると
あたふたしたように の周りを周り始めた。





「面白い案山子さんだね!どぉしたの?」




もぴょんと一気に起き上がると興味津々にたずねた。




「・・・・」



でも案山子はしゃべらない。






「・・・。あんまりしゃべらない案山子さんなんだね」



はにこっと笑うとソフィのいる方向へ足を進めた。



「ソフィにも見せてあげよう!一緒にいこ?案山子さん」




案山子は少しこくっと頷くように頭を揺らした。




の足音に混じって棒のこつこつという音が響く。


















「まぁ、本当に動くのね!」



から一通りの話を聞き、
ソフィは岩の上から案山子を見上げた。






「でもね・・肝心の杖が見つからなかったの」



はしゅんとしながら話す。





「大丈夫よ。なんとかなるわ」



ソフィは優しい声で話すと
優しい力で の両手を握った。




こつ、こつっ・・





案山子は急にくるりと方向を変えると
どんどんと奥まで跳ねていってしまった。









「なにがあったのかしら」





「用事でも思い出したのかな」




ソフィと は顔を合わせて疑問を浮かべた。










「・・そぉいえばさ、ソフィ」



は案山子がいなくなった方向を見ながら言った。





「なあに、



ソフィも と同じ方向を見る。









「あの案山子さんの頭・・何かに似てない?」




はソフィの傍にしゃがむと
地面に転がっている少しとんがった石を拾った。



拾った石で案山子そっくりな顔を描く。




「あぁ・・・私の嫌いな野菜のカブにそっくりね」



ソフィは の可愛らしい絵を見て
少し苦い顔をしふっと笑って答えた。





「そ、カブ!!カブにそっくりなの、あの案山子さん!」



はにこっ笑った。




「名前とかないのかな。あのカブ頭の案山子さん」




は石で案山子の絵の横に『カブ』と書いた。




「・・・でも、しゃべらないのよね」


ソフィも首をかしげる。








こつ、こつっ・・・





すると案山子が何かを棒の腕に引っ掛けて跳ねてきた。






からんからん。




案山子はソフィの足元にその何かを落とした。





「あら。」


ソフィは落とされたものを拾った。




「すごい、杖だ!」


落とされた棒を見て驚いた。





ソフィに渡されたのは一本の杖だった。
取っ手の部分には鳥の彫刻がしてある。




「どこからもらってきたの?」



は案山子を見上げた。




「・・・」


案山子は何も答えない。





「なんだか不思議ね。・・でも、もらってもいいのかしら?」




ソフィは案山子に申し訳ない顔をしながらたずねた。




「優しいのね。ありがと」


ソフィはにこっと笑う。




「ありがと、案山子さん!」


もさっきの不安からも逃れてにっこりと笑った。




こくん、とまた頷くように頭を揺らすと
また案山子は山の向こうのほうへこつこつと跳ねていった。






「さっきは杖を取りにいってたのね」



ソフィは少し感心するような目で案山子の後姿を見届けた。



「これで、お別れなのかな?」



は悲しそうに数歩山の奥へ足を進めた。
そして案山子の後姿を見る。






「どぉかしら・・・
でも今晩泊めてくれるお家でもつれてきてくれると嬉しいわね」




ソフィはちょっとにやりとしながら笑った。




「あ、そっか・・・もぉ日が暮れてきちゃったもんねー」



は空を見上げる。




綺麗な青空に混じって夕焼け色が混じった雲が
どんどん強い風に飛ばされていく。





「うぅ・・寒くなってきたわね・・・」


ソフィは強い風を睨み、上着を強く握り締めた。



「確かにちょっと寒くなってきたね・・。
そろそろ泊まれるところを探さないと・・・」



は案山子を助けるときにあげた袖を元通りに戻した。








「・・あら、 。煙のにおいがするわ」




薄暗い空に白い煙が山の奥から立ち上る。



「うんっ!いこう、ソフィ。家があるかも!!」



はソフィに右手を差し出した。




「ありがとう。いきましょう」



ソフィは の右手を握って杖を支えに起き上がった。




とソフィは強い風に逆らって一歩一歩進んでいく。







がっちゃん、がっちゃんっ




何か機械が動く音が近づいてきた。




二人は風のせいで目を細めながら前を見つめる。







二人の前に動く大きな城が姿を現した。

その下にはカブ頭の案山子がぴょんぴょんとはねてくる。









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ハウル夢。10話完成です。
やっと動く城が出てきました。
これからが楽しいところです。
キーボードを打つ指も早まりますね。
一気にアップしちゃいましょうか。
神風 霰 06/11/19 SUN



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