俺がここまでするのは



貴女にだけなんですよ




片道きっぷをふたりぶん





「わざわざ東京まで…ありがとうございます」



は驚きの余りあまり声が出なかった。



「いえ。たいしたことではありませんよ」



永四郎は一足早く成田空港まで迎えに来ていた。

榊が自家用ジェット機を出すと言ってくれたが
そこまでお世話になるわけにはいかなかった。



「貴女は大切な我が比嘉中テニス部の花になる方です。
このくらいことしなくでどうするのです?」



永四郎はそう言って優しく手を差し伸ばした。



「花なんて…そんなことないです…」

「クス。でもこっち(沖縄)に来ればわかるでしょう。
貴女は我々の恵みの雨であり可憐な花だ」


永四郎は先日の早乙女とのやり取りを思い出した。

全国に行くには彼女の支えが必要だ。

あの憎たらしい早乙女のお陰で更にむさ苦しいことこの上ない。
そして の存在がより一層これからの比嘉中を強くする。





「あの、木手さん。
実は太郎さ…榊先生から手紙を預かっているんです」



受付までの道で、榊から預かった手紙を差し出した。




「"太郎さん"ですか…」


永四郎は少し驚きながら差し出された手紙を受け取った。


「ぇ、あ…さ、さっきのは学校以外では
"太郎さん"って呼ぶように前に太郎さんに言われてて」



は恥ずかしさのあまり顔を赤くしながら俯いた。



「照れる姿まで可愛らしい…」

「き、木手…さん?」


突然の永四郎に は更に顔を赤くした。



「お世辞ではありませんよ」


「尚更恥ずかしいです!」


「フフ…なるほど。
まったく比嘉だけでなく氷帝の監督もなかなか手強いようですね」



永四郎は赤くなっている の頭を優しく撫でると
手紙を読みながらクスクスと笑いはじめた。




「え…?木手さん、太郎さんや早乙女監督と何かあったんですか?」



は早乙女の存在を先日榊にかかってきた一本の電話で知った。



遠く離れた沖縄での自然に囲まれた中学生活を勧められた
海や暖かい気候が好きだったこともあり、特別招致という形を含めた転校になった。



その の了解から二日。

手続きを終えてさぁ沖縄に渡ろうと空港に行ったら
永四郎が自分をわざわざ迎えに来ていたのだ。




「いいえ。これは榊先生からの挑戦状ですね」



「挑戦状…ですか?」



「はい、そうです」



永四郎はクスクス笑いながら手紙を折った。






「気になるようですね。
では…今後の俺に関わる内容、とでも言っておきましょうか」




「?そうだったんですか…
なら深くは聞かないほうがいいみたいですね」




「フフ。ノープロブレム。心配ありません。
この挑戦的警告宣言には俺が勝ちますよ」



木手は疑問符を浮かべた の小さい荷物を
の手から取ると音もなくゲートへ歩きだした。




「木手さん!私、受付でチケットをまだ受け取ってないです!」


「貴女は"特別招致"なんです。貴女の財布の中身は使わせませんよ」



永四郎はポケットからチケットを取り出した。





「あ…そっか…私は招致だったんだ」


「でも木手さん。貴方の荷物は…
もしかして手ぶらで東京まで出来たんですか?」



の言葉に永四郎は当たり前だと言うような目をして答えた。







「俺と貴女の片道チケット二枚の他に何が必要だと言うのです?」






そう言って永四郎は の手を取り
もう片方のポケットに閉まった榊からの手紙を握り潰した。




私が目の前にある花に手を伸ばさないわけがないでしょう。


もう榊太郎、貴方の花ではない。
比嘉中の―いや、俺の花だ。




..end




***    ***


とてつもなく久しぶりなうpになってしまいました…

理由はワタクシの"予備校生"というとんでもねぇ身の上からなのですが
なので携帯サイトの方で主にうpしている状況です。。

そしてお詫びな気持ちとしてこの夢は携帯サイトとの共同夢にしました。
そのため少々夢が"携帯サイトちっく(←何)"になっているのが痛いトコですが

この夢の背景は携帯サイトの夢で垣間見ることができます。
SSですがよかったらそちらのほうもデザート感覚でどうぞ。

09/09/09 神風 霰




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