たまたまの奇跡が呼んだ幸運
その幸運のあとも
もちろん
幸せなとき2 (番外編)
「お兄ちゃん!この袋、忘れてるよっ!!」
武の妹は靴をはいている途中の武に
シンプルな紙袋をほいっと渡す。
「おっ、わりぃ、さんきゅーな!」
慌てて武はそっと紙袋を受け取った。
「きをつけてね」
「おうよ。じゃ、いってきます!!」
元気よく玄関のドアを開けて、
武はいつもの自転車の鍵を開けた。
「・・・まったく、イチバン大切なものを忘れるとは」
武は少し冷や汗をかきながら独り言をつぶやく。
「いけねぇな、いけねぇよ」
かたん、と道の段差を降りると
自転車のかごに乗せた紙袋が
かたんと一緒に小さく弾む。
ちらりと武は心配そうに紙袋を見た。
このシンプルな紙袋に入っているのは
幼馴染から昨日借りたタオル。
タオルの持ち主の名前は
。
武は幼馴染なのだが、
クラスの男子からも意外と人気な
は
男女問わず誰にも優しくて元気な奴。
自分も密かに昔から想いを寄せていたが
昨日あっさりと越前に見破られてしまった。
ついーと自転車を青学まで走らせる。
にタオルを渡すのを待ちわびて。
「桃センパイ」
珍しく寝坊せずに朝練習に来たリョーマは武に問いかける。
「なんだ、越前」
武はロッカーを開けながら学ランを脱ぎ始めた。
「
センパイのタオル、ちゃんと持ってきましたか?」
ごんっ
開けきった瞬間、武はロッカーの角に頭をぶつけた。
「もちろんに決まってるだろ!!」
「ふーん・・・オレも一緒に行きたいっス」
リョーマはさっさと着替え、
ラケットバックからラケットを取り出す。
「っ〜・・・ダメだ」
武は頭をぶつけたロッカーの角を睨み、
歯を食いしばりながら答えた。
「なんでッスか」
リョーマはむすっとして反抗する。
「オレが借りたタオルだからだ」
目をうるうるさせながらちらっとリョーマを見る。
「ふ〜ん・・・じゃ、頑張ってください」
くるっとリョーマは踵と返して出入り口の扉に向かった。
「やけに、あっさりだな・・って越前!もぉちょっと待てよ!!」
武はあたふたと準備を始めた。
がちゃ。
リョーマがドアノブに手をかけようとしたら急に扉が開いた。
「おふたりさ〜ん。もぉー準備は大丈夫かにゃ〜??」
「あ、菊丸センパイ」
「手塚が怒っちゃうよ〜??」
「今、行きますっ」
「オレも、今すぐっ!」
リョーマと武は急いで部室を出て行った。
そうして朝練は始まった。
奇跡が運んだ幸運
はたして最後も
奇跡を呼ぶ
のか・・・?
→Next・・・?
桃城夢、『幸せな時』の番外編です。
続き物になっちゃいましたね(汗
あともう一話ぐらい。
お付き合いください。
だんだん書くのが楽しくなってきました。
神風 霰 06/12/09/Sat